女将のブログ

金継で生き返る器

新門荘では器を割ったり、ヒビを発見したら報告書と共に私のデスクに現物を置いておくルールがあります。それは15年以上前に某旅館のオーナーに教えて頂いた「金継ぎ」を私がする為です。

「金継ぎ」とは陶磁器の破損部分を漆によって接着して、金で装飾して仕上げる修復方法です。茶道精神の普及もあり金継ぎに芸術的な価値が見いだされるようになった歴史もあります。

ただ、私が教えて頂いた「金継」は漆ではなく合成樹脂などを使用する一般的に普及している簡易的な方法です。

コツコツとしていた金継ですが、もう毎日のように破損の器がデスクに置かれるようなり、併せて私の時間も限られており「金継ぎ待ち」の器が段ボール3箱以上も溜まっていました…


幸いなことに、昨年末から「金継ぎ」に興味のあるスタッフが4-5名立候補してくれて、一緒にやっていくことになりました。しかし、それでも量が多すぎる!我流の金継方法ですが、もっと良い方法があるのでは?!と思っていた矢先に見つけた「金継」のワークショップ! これやぁ~!!と意気込んで出かけてまいりました。


さて、ながーい前置きでしたが、このワークショップ。実はFacebookで見つけました。数人くらいかな?と思っていたら、なんと14名も参加者が居て、定期的に開催されているワークショップだと知りました。過去には料理屋のオーナーさんや、他府県からわざわざ足を運ぶ人もいたそうです。


私が持参した器は4点。見事な破損状態。でもどの器も私が利用用途をしっかりとイメージして購入した思い入れのあるものばかりです。 大きく欠けた部分は、粘土のような合成樹脂をコネコネしてパテ代わりに接着しました。一つの器を接着している間に、その前にパテを充てていた器はほぼ完全に接着されています。その後やすりで滑らかにします。

続いて細い筆に金粉を付けてなぞっていきます。私にはこの作業が一番緊張しました。使い慣れない細い筆。金の分量の多少で、完成度が左右されるからです。


10年前に和モダンタイプの客室で、セルフコーヒー用に購入した清水焼のコーヒーカップ。取っ手がきれいに割れ落ち、もはや再生不可能かと思われていました…。高価な物なので、絶対に修復する!という強い熱意(怨念?)が入り、見事完成。

お造りからデザートまで、幅広く料理を盛れると確信し、気に入って購入した小鉢も、むしろ金を塗らなければどこが欠けたのか分からないくらい綺麗に接着できました。青い絵柄があるので、いまや金がアクセントになっています。

高山寺の鳥獣戯画の湯呑。大きくかけた破片が見当たらず、パテで穴を埋め、やすりで綺麗に丸みをつけました。他のご参加された方から絶賛を受けた金継ぎの完成品。

今年の1月から朝食内容もガラリと変わったので、もう使わないかもしれませんが、以前は朝食用の松花堂弁当箱に出汁巻を盛って入れていた中器。これも満足のいく金継ぎの仕上がりです。

2時間で4点の修復。
私はこれまで、(破損の器が多すぎるのもあり)一つの行程をまとめて行っていました。たとえば「よし、今日は接着だけするぞ」「今日はヤスリだけ」などのように。そのため、完成までかなりの日にちを要していました。(毎日金継作業に時間を割けるわけではないので)

しかし、たとえ修復する器が多すぎても、一工程をまとめてするよりも、小一時間で数点仕上げていく方が逆に効率が良いことが分かりました。また、これまで金箔をソロリソロリとかなりの時間を要して貼っていましたが、筆に金粉を付けて修復する方が早くて綺麗な仕上がりになることも分かりました。

ドキドキしながら初めて「ワークショップ」なるものに参加してみましたが、低予算でしっかり学ぶことができました。

社内では「金継ぎした器は数がどうしても足りない時に料理を盛ってほしい」としていましたが、綺麗に修復された器を見ると、簡単に棄てずに物を大事にしている精神を臆することなく、ぜひともこの器に料理を盛って!とお願いしたくなりますね。

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